津野教授,池下助手の研究グループの論文がアメリカ化学会 The Journal of Organic Chemistry のCover Articleに選出されました
2021-08-17ホットニュース
応用分子化学科 津野教授,池下助手ならびにBrunner教授(Universität Regensburg)の二つの論文がアメリカ化学会のThe Journal of Organic Chemistryに掲載され,Cover Articleに選出されました。
Brunner, H.; Ikeshita, M.; Tsuno, T. Chirality of the Conformation Attacks the Planarity of the sp2 Carbon Atom in a Covalent Bond. J. Org. Chem. 2021, 86, 15, 10414–10419.
Brunner, H.; Ikeshita, M.; Tsuno, T. Rotation about a Covalent Bond and Pyramidalization of an Adjacent sp2 Center are a Synchronized Molecular Motion. J. Org. Chem. 2021, 86, 15, 10420–10426.
分子はその構造の鏡像と重ね合わせることができない異性体をもつことがあり、そのような分子をキラル分子、また鏡像関係にあるそれぞれの異性体をエナンチオマーと呼びます。アミノ酸には、D体・L体の2つのエナンチオマーが存在しますが、生物を構成するアミノ酸は片方のL体のみです。これを「生命のホモキラリティー」と呼び、なぜそのように片方のエナンチオマーのみに偏っているのかは明らかになっておらず、生命の起源にも関係する未解決の難問となっています。
本論文では、ケンブリッジ結晶構造データベース (CSD) に登録されている酢酸メチル骨格 (Cβ–CαH–C′(═O)–OMe) を有する15,295個の分子構造の解析を行い、回転角ψ = O═C'–Cα–Cβおよびピラミッド化角θ = O(MeO)C'Cαが特異な波状の相関関係を示すことを見出しました。さらに、ケトン・イミン骨格や我々の生体内を構成するアミノ酸を含むアミド・ペプチド骨格など種々のsp2炭素骨格においても同様に解析を行い、この波状関係の一般化にも成功しました。本研究成果によって、従来アキラルな平面構造と考えられていたsp2炭素骨格が、結晶中において特有の法則性をもって分子キラリティーを示すことが判明し、これらの法則性の理解は「生命のホモキラリティー」の解明への重要な手がかりとなる可能性があります。